「心電図検定」というものが日本不整脈心電学会にて、2014年から検定が開始されました。
心電図検定の目的とは、「心電図にかかわる多くの知識を普及させ、我が国の医療の質の向上につながる活動を支援すること」とのことです。
「認定心電図技師」と言われているものもありますが、(現在は、JHRS認定心電図専門士と名前を変えております。)そちらとは、違うものになります。認定ではありませんので、ご注意ください。
わたしは、循環器内科があるだけの総合病院勤務の臨床検査技師です。
そんなわたしが、2級を取得した後、1級を取得を目指しました。そんなわたしが受けた時の問題の特徴と、勉強法を紹介します。
2級を取得した時の話は以下からどうぞ。ほとんど概要は似ていますが、「問題内容」「勉強法」が少しずつ違います。よければ、比較してみてください。
○ 心電図検定概要
受験資格:誰でも(心電図に興味をもつ方であれば、どなたでも受検できます。って公式に書いてあります。お茶目だなって思いました。)
試験日:8月の土・日(級によって日付、時間が違いますので、ご注意ください。)
会場:東京・大阪・福岡
申し込み期間:5月ごろ~
検定料:【1級】10,000円+システム利用料
合格ライン:おそらく、6割
※デバイダーや定規の持ち込み可能です。
○ 心電図検定の問題、特徴とは
今回紹介する1級のレベルは、
心電図の高度な判読力を有するものとされており、「循環器専門医、心電図に深く精通したメディカルプロフェッショナル」としています。
心電図検定の問題内容と特徴は、
- シンプルな問題
- 複合問題
- 見分けづらい心電図問題
- 1つの心電図に対し、詳しい知識を要する問題
上記の点において、それぞれの級に応じたレベルの問題が出てきます。
2級取得説明の際にも、説明しましたが、1級の場合は大幅にシンプル問題が大幅に減り、「複合問題」「見分けづらい心電図」「1つの心電図に対し、詳しい知識を要する問題」が大半を占めるようになります。
今回は1級レベルの問題について、それぞれの例題を簡単に紹介します。
● シンプルな問題
もし、シンプル問題が出てきたら、1級受験する人は点数を落としてはいけません。絶対。
シンプルな問題の中でも、選択肢があると見つけやすい、肺塞栓やたこつぼ心筋症なども勉強しておくといいと思います。
どの問題文もヒントになりますので、波形だけでなく、しっかり問題文を読む癖をつけてください。
例えば、たこつぼ心筋症は文章問題からヒントを得ることができます。わたしの受けた試験では「同僚と口論の最中に、胸痛発生。」という問題文。絶対たこつぼやん。って思いました。
● 複合問題
出てくる波形:「右脚ブロック」+「発作性上室性頻拍(PSVT)」
解答:「右脚ブロック」
え・・・!!??びっくりした・・・。回答の選択肢にPSVTが無い・・・。これが、1級か・・・。
出てくる波形:「Ⅱ度房室ブロック(Wenckebach型)」+「補充収縮」
選択肢:①「Ⅱ度房室ブロック(Wenckebach型)」②「Ⅱ度房室ブロック(MobitzⅡ型)」③「完全房室ブロック」④「上室性期外収縮(PAC)」
補充収縮がねー、これがまたいやらしい。
Wenckbach型により、PRが延びた後に落ちるQRSの部分に、補充収縮が入ることで心臓の機能を補うことができている心電図です。
心機能としては適切かと思いますが、読み手としては非常に読みづらい心電図となります。こういった場合は、選択肢をみて、一つずつ消去法で解答を導き出すようにしてください。
● 見分けづらい心電図問題
ST上昇、頻脈は抑えておいてください。
出てくる波形:「心膜炎」
選択肢:①「心膜炎」②「たこつぼ心筋症」③「高カリウム血症」④「前壁心筋梗塞(MI)」⑤「早期再分極」
ほとんどの心電図でSTが上昇しており、見分けづらい心電図の選択肢が並びます。早期再分極を選択肢に入れてくるあたりが、いやらしいなと思いました。
そして、頻脈シリーズ
出てくる波形:「発作性上室性頻拍(PSVT)房室回帰性頻拍(AVRT)」
選択肢:①「PSVT AVRT」②「PSVT 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)」③「心房頻拍(AT)」④「2:1の心房粗動(flutter)」⑤「心室頻拍(右室流出路起源)」
頻拍シリーズでも、なにが起源で頻拍が起きているかを心電図から読み取らなくてはならない問題が多くあります。
● 1つの心電図に対し、詳しい知識を要する問題
出てくる波形:「WPW心電図」副伝導路の推定位置はどれか
選択肢:①「左後壁側」②「左側壁側」③「右後壁側」④「右前壁側」⑤「中部中隔側」
えー。推定部位とか、考えたことなかったー。1級きつい・・・。
2級であれば、「WPWの心電図」に対して、「A~C型の型分類まででOK」でしたが、1級ではケント束の推定部位まで答えさせる可能性があります。
出てくる波形:「前壁のMI(心筋梗塞)」梗塞部位はどこか
選択肢:①「#3」②「#6」③「#8」④「#12」⑤「#14」
このように血管の梗塞部位を問いてくる問題があります。血管の番号で示される場合と、日本語で示される場合があるようです。勉強しておいてください。
○ 心電図検定1級 勉強法
わたしは、前文でもお伝えした通り循環器内科があるだけの総合病院勤務の臨床検査技師です。来院する患者さんはnormalが多く、大きな臨床的意義をもつ波形の患者さんは少ないです。
そんなわたしが、1級を取得するために行った勉強法を紹介します。2級を勉強するよりも正直、かなり苦労しました。
ポイントは
- たくさんの種類の波形をみる。
- その波形の特徴を挙げて、それに合致する心電図を探す。
- 自分の教科書またはノートを確保する。
内容自体は2級の勉強法と変わりませんが、2級よりも重点的に行ったのは、
- たくさんの波形をみること
です。まず、問題集を見ました。
- 心電図検定公式問題集&ガイド:受験者必携!2級/3級
改訂3版 心電図検定公式問題集&ガイド: 受検者必携! 2級/3級
2級に引き続き、こちらを使用して、様々な波形を確認しました。
問題と選択肢と解説が載っておりますので、非常に使いやすいと思います。しかも、分野ごとでなんとなく分かれているため、同じ解答でも違う波形を見ることができます。
複合問題も出てきますので、受験するなら、一度は目を通しておくべき本だと思います。
そして、わたしは、他に、ネットに転がっている心電図の波形や、心電図問題を探してみたりしました。
わたしがネットにあった心電図の問題として見ていたものは、日本不整脈心電学会からのクイズがあります。
また、持田製薬株式会社さんが掲載しております心電図の問題も勉強に使わせて頂いておりました。持田製薬株式会社さんのは、治療方針なども記載があるため、臨床の現場でかなり役に立つイメージです。
これだけでは、知識が足りなさそうで、他に手を出したものは、「サーベイ」です。
サーベイについても記事がありますので、よければ参考にしてください。
年に2回以上のサーベイが自施設で行われ、その中で画像サーベイがあります。過去の分も含めて画像サーベイを漁り、5年分ほどの心電図画像サーベイを取り組みました。それぞれのサーベイには解答もあるはずですので、そちらも確認して下さい。
これだけでは、知識が足りなさそうで、他に手を付けていたものがあります。こちらのYou Tuebeを参考にしておりました。
あとは、とにかく変わった心電図に見慣れるために、自施設の本を読み漁り、たくさんの波形を見ました。とにかく、2級取得時よりも、たくさん波形を見ることに重きを置きました。
そして、わたしが利用していた教科書についてですが、2級の勉強の時とは違う教科書をおすすめします。
2級を取得した時に使用した本は、正直1級の勉強には物足りない本でした。そこで勉強で使用した本は、
- 心電図の読み方パーフェクトマニュアル ―理論と波形パターンで徹底トレーニングー
心電図の読み方パーフェクトマニュアル―理論と波形パターンで徹底トレーニング!
心電図を勉強するうえでは、みなさんが高確率で読んでいる本かと思います。
ただ、この本、基礎知識が無いと、妙に読みづらいんです。しかも厚いし。嫌になる。でも、基礎という土台が身に着いた時に、すごく勉強になることが書いてあるんです。
基礎から始めたい方は正直、別の本からお勧めします。
わたしも、最初の無知な頃に「心電図の勉強するのに使いなさい」と渡されましたが、全く頭に入りませんでした。
今確認すると、Kindle版(電子版)もあるんですね。あれだけ、厚いし、Kindle版が良かったな。
他にも、日本不整脈心電学会から出版されている本があります。心電図検定は日本不整脈心電学会が主催ですので、そこから出版されている本を購入するのは理にかなっていると思います。
わたしは、存在を気づくのが遅かったため、これを使わずに試験を受けました。
- 実力心電図 ―「読める」その先へ
あまり出回っていないのか、購入方法などの明確な記載がされていません。値段もサイトによってブレがあるので、購入する方は色々調べてみた方が良いかと思います。
○ わたしの勉強期間
わたしは、心電図検定2級を取得したベースの知識のまま翌年に1級の試験を受けました。できるだけ、知識を忘れてしまわない内に受験するのがよいと思います。
循環器内科があるだけの臨床検査技師であるわたしの勉強期間は、約4か月です。
2級を取得した時より、深い知識が必要なことが多く、新しい知識をかみ砕いて定着させるのに、正直、非常に苦労しました。
しかも、自分の知識が追い付いているか実感する方法が無く、病院の現場でそのような波形に遭遇する機会もかなり少ないため、ただただ、本に記載されている波形とのにらめっこが辛い印象でした。もう少し早く勉強を始めていたら良かったなと後悔しました。
こんなこと言ったら怒られてししまうかもしれませんが、循環器内科があるだけの総合病院勤務の臨床検査技師。わたしが1級を受けた感想です。
「1級の知識は、わたしの病院ではいらないなぁ。」です。
1級の勉強をしていて、しんどいなー。と思っていた理由としては、
「低体温とか、体温はかってほしいなー。」
「PSVTはPSVTと読み取るだけで、ウチの病院はその先はいらないんだよなー。」
とか、頭によぎってしまっている時点で、モチベーションが上がらなかったのかもしれません。
ただ、もちろん受験してよかったと思っています。活かせる必要な知識もありましたし、なにより心電図を読むにあたっての自信につながりました。
ちなみに、1級の上位者は「マスター」という称号が得られます。バッチは黒ハートに金縁。めちゃめちゃカッコいい!!それを目指すだけでもモチベーションになるかもしれませんね。
ちなみにわたしが、心電図検定を受けるようになったきっかけは、緊急検査士の試験で、心電図を学んだことでした。
ぜひ、興味がある方は、緊急検査士の受験もいかがでしょうか。国家試験の知識がフル活用されるので、若ければ若いうちに受けておくと、有利です!!